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5.ビタミンEに関する研究

  食品保全化学研究室では、脂質以外の物質も研究対象としています。たとえば脂溶性ビタミンEなども研究の対象です。


内容

  ビタミンEは生体および食品産業において非常重要な抗酸化物質です。ビタミンEには大きく分けて、トコフェロール類とトコトリエノール類が存在し、さらに活性部位(クロマン環)のメチル基の数と結合位置の違いにより、α体、β体、γ体、δ体に分けられます(図1)。これらは同族体と呼ばれ、教科書中には合計8種類のビタミンE同族体が存在すると記されています。


図1 ビタミンE同族体の構造

  ビタミンEは生体への取り込まれやすさから活性値(α−トコフェロールの値を100とした相対値)というものが求められています。これをビタミンE活性といいます。ビタミンE活性は、肝臓中に存在する「α−トコフェロール移送タンパク」との親和力を表した値だと考えられています。ビタミンE活性はいくつかの値が報告されていますが、代表的な値としては表1のとおりです。この表からわかることは、α−トコフェロールの次にβ−トコフェロールのビタミンE活性が高いということです。

表1 ビタミン同族体のビタミンE活性

ビタミンE同族体 ビタミンE活性
α−トコフェロール 100
β−トコフェロール 2〜40
γ−トコフェロール 1〜11
δ−トコフェロール 1
α−トコトリエノール 27〜29
β−トコトリエノール 5

  ところが近年、ほとんどの海洋生物中にはMarine-derived Tocopherol(MDT)と呼ばれる新規ビタミンEが存在することが報告されました(図2)。MDTは、α−トコフェロールとほぼ同じ構造を有しますが、側鎖の末端に二重結合が存在する点だけが異なります。
  食品保全化学研究室では、このMDTが魚介類を使用した加工食品中にも存在することを確認しております。
(N. Gotoh, D. Mashimo, T. Oka, K. Sekiguchi, M. Tange, H. Watanabe, N. Noguchi, and S. Wada, Analyses of marine-derived tocopherol in processed foods containing fish. Food Chem. 129,279-283 (2011). [Abstract])


図2 Marine-derived Tocopherol(MDT)の構造

  そこで、食品保全化学研究室では、マウスを用いてMDTのビタミンE活性を調べました。その結果、MDTのビタミンE活性はβ−トコフェロールより高いことを発見しました(表2)。

表2 MDTのビタミンE活性

ビタミンE同族体 ビタミンE活性
α−トコフェロール 100
β−トコフェロール 26
γ−トコフェロール 4
δ−トコフェロール 検出されず
MDT 49

引用元(N. Gotoh, H. Watanabe, T. Oka, D. Mashimo, N. Noguchi, K. Hata, and S. Wada, Dietary marine-derived tocopherol has high biological availability in mice relative to alpha-tocopherol. Lipids 44, 133-143 (2009). [Abstract])